基本分析

ベータ・アルファとは?ベンチマーク比較で銘柄の性格を測る

個別銘柄を市場指数と比較し、ベータ(感応度)、アルファ(超過収益)、トラッキングエラー、情報比率を求める計算式と、その解釈・限界を解説します。

ベータbetaアルファalphaトラッキングエラー

この分析で分かること

ベンチマーク比較は、銘柄の値動きを市場指数の値動きへ回帰し、「市場に連動する部分」と「その銘柄固有の部分」に分解します。ベータは市場が1動いたときに何倍動くか、アルファは市場連動分では説明できなかった平均リターン、トラッキングエラーは指数からの乖離の大きさです。

分析方法

  1. 銘柄とベンチマークの終値を日付で突き合わせ、両方に価格がある日だけを残します。
  2. それぞれの日次対数リターンを計算します(単純リターンではありません)。
  3. 共分散と分散からベータを求め、平均リターンの差からアルファを年率換算します。
  4. 超過リターン(銘柄−指数)の標準偏差を年率化してトラッキングエラーとします。
  5. 60営業日の窓を1日ずつずらし、ベータと相関の時間変化を追います。

数式と変数

市場モデル(回帰式)

ri,t=α+βrm,t+εtr_{i,t}=\alpha+\beta\, r_{m,t}+\varepsilon_t

r_{i,t}は銘柄の対数リターン、r_{m,t}はベンチマークの対数リターン、ε_tは市場で説明できない残差(銘柄固有成分)です。

ベータ(感応度)

β=Cov(ri,rm)Var(rm)\beta=\frac{\mathrm{Cov}(r_i,r_m)}{\mathrm{Var}(r_m)}

本実装の共分散・分散は分母nの母集団版です。βは市場が1%動いたときに銘柄が平均何%動くかの推定値です。

アルファ(年率)

αann=(rˉiβrˉm)×252\alpha_{ann}=(\bar r_i-\beta\,\bar r_m)\times 252

無リスク金利を0とみなしたJensenのαです。日次平均の差を年率換算しているため、252倍の単純年率で複利ではありません。

トラッキングエラーと情報比率

TE=s(rirm)252,IR=(rirm)×252TETE=s(r_i-r_m)\sqrt{252},\qquad IR=\frac{\overline{(r_i-r_m)}\times 252}{TE}

s(·)は不偏標準偏差(分母n−1)です。IRの分子はαではなく平均超過リターンである点に注意してください。βが1から離れるほど両者は一致しません。

相関係数

ρ=Cov(ri,rm)σiσm,β=ρσiσm\rho=\frac{\mathrm{Cov}(r_i,r_m)}{\sigma_i\sigma_m},\qquad \beta=\rho\frac{\sigma_i}{\sigma_m}

βは相関とボラティリティ比の積に分解できます。βが高い理由が「市場と強く連動するから」なのか「単に値動きが荒いから」なのかを切り分けられます。

用語の定義

ベータ
ベンチマークへの感応度です。1で同調、1超で市場より大きく動き、1未満で穏やか、負なら逆行を意味します。
アルファ
市場連動分を差し引いた後に残る平均リターンです。銘柄固有の上乗せ分と解釈されます。
トラッキングエラー
指数との差の年率標準偏差です。指数からどれだけ離れて動くかの大きさで、方向は含みません。
情報比率
取った乖離リスク1単位あたりの超過リターンです。アクティブ運用の効率を測ります。
残差リスク
市場では説明できない銘柄固有の変動です。分散投資で薄められる部分に対応します。

直感的な例

マラソンのペースメーカーに例えます。βはペースメーカーが加速したとき自分がどれだけ加速するか、αはペースメーカーの速度で説明できる分を差し引いてなお速かった分、TEはペースメーカーからどれだけ離れたり近づいたりを繰り返したかです。β=1.3・α=+4%なら「市場より3割激しく動き、その激しさで説明できる以上に年4%速かった」となりますが、α=+4%が誤差の範囲か否かは、残差の標準誤差を見なければ判定できません。

結果の読み方

  • βが1.2超なら上昇局面で有利、下落局面で不利という対称の性質です。片側だけの利点ではありません。
  • αは推定値であり、標準誤差を伴います。符号だけを見て「固有の価値がある」と結論しないでください。
  • βを相関とボラティリティ比に分解し、連動の強さと荒さのどちらが効いているかを確認します。
  • ローリングβが期間中に大きく動く場合、全期間の単一βはその平均にすぎません。
  • TEが大きいことは良し悪しではなく、指数と別物であるという事実の記述です。

投資への活用

  • 市場見通しに応じて高β・低βを選び分ける材料にします。
  • βを使って指数先物やETFでのヘッジ比率を見積もります(β=1.3なら指数1.3単位の売り)。
  • 相関の低い銘柄同士を組み合わせ、ポートフォリオの分散効果を設計します。
  • αとIRの推移を追い、超過収益が持続しているか単発かを区別します。

限界と注意点

  • ベンチマークの選択で結論が変わります。業種が合わない指数を使うとβもαも歪みます。
  • βは一定ではなく、特に危機局面で急上昇する傾向があります(相関の同時上昇)。
  • 本実装は無リスク金利を0として扱うため、αは厳密なCAPMのJensenのαと一致しません。
  • 共分散・分散は分母n、トラッキングエラーは分母n−1と分母が揃っていません。標本が小さいほど差が出ます。
  • 推定期間が短いと不安定です。少なくとも1年以上のデータで評価してください。

実際の株価データで確認する

トヨタ自動車を例に、該当パネルを開きます。移動後に銘柄・期間・入力系列を変更できます。

ベンチマーク比較(β・α)を実データで見る

本ページは分析手法の理解を目的とした情報提供です。将来の価格や利益を保証するものではなく、 特定銘柄の売買を推奨するものではありません。