OHLC分析
ローソク足パターンとは?包み足・ハンマーの検出と有効性の検定
ドジ・ハンマー・包み足・明けの明星など9つの古典的パターンの機械的な定義と、検出後の先行きリターンをt検定で評価する方法・多重検定の注意点を解説します。
ローソク足パターン包み足ハンマー明けの明星赤三兵
この分析で分かること
古典的なローソク足パターンを閾値で機械的に定義して検出し、「そのパターンが出た後、実際にどうなったか」を数えます。パターンの解説だけで終わらせず、検出後1日・5日の平均リターンをt検定にかけるところまでを1つの分析にしています。
分析方法
- 各パターンを実体とヒゲの比率で定義し、条件に合う日を全期間から抽出します。
- 検出日の終値を起点に、1営業日後・5営業日後のリターンを計算します。
- パターンごとに平均リターン、標準偏差、件数を集計します。
- 帰無仮説「平均リターン=0」に対するt統計量を計算します。
- |t|>1.96 を5%有意の目安として表示します。
数式と変数
ドジの定義
実体が値幅の10%未満で、上下にヒゲが存在する日です。始値と終値がほぼ同じであることを意味します。
ハンマー / 流れ星の定義
Bは実体の長さ、U・Dは上ヒゲ・下ヒゲの長さです。片側のヒゲが実体の2倍以上、反対側は実体の半分以下という条件です。
先行きリターン
検出日の終値で建てた場合を想定した単純リターンです。翌日の寄り付きで建てる場合とは一致しません。
平均リターンのt統計量
nは検出件数です。この式は観測が独立同分布であることを前提にしており、5日リターンのように窓が重なる場合は前提を満たしません。
用語の定義
- 包み足(エンゴルフィング)
- 当日の実体が前日の実体を完全に包み込む形です。転換シグナルとされます。
- はらみ足(ハラミ)
- 当日の実体が前日の実体に完全に収まる形です。勢いの弱まりとされます。
- 明けの明星 / 宵の明星
- 大陰線→小実体→大陽線(またはその逆)の3本組です。底打ち・天井の転換形とされます。
- 赤三兵 / 黒三兵
- 陽線または陰線が3本続き、順次高く(安く)引ける形です。トレンドの強さを示すとされます。
- 多重検定
- 多数の候補を同時に検定するほど、偶然だけで有意になる候補が増える問題です。
直感的な例
9パターンを1日・5日の2つの期間で検定すると、検定の総数は18になります。すべてのパターンに効果が無くても、5%水準なら平均して約0.9個が偶然有意になります。つまり「1つだけ有意だった」という結果は、何も無いことと区別がつきません。Bonferroni補正を掛けるなら閾値は0.05/18≒0.0028、t値でおよそ3.0が必要です。表のt値はこの補正前の値です。
結果の読み方
- 有意と表示されたパターンも、18回の検定の中の1つであることを前提に読んでください。
- 件数が少ないパターン(明けの明星・宵の明星など)は、数件の大きな値で平均が決まります。
- 5日リターンは窓が重なるため観測が独立ではなく、t統計量は過大に出ます。
- パターンの定義は閾値に依存します。2倍・0.5倍・10%を変えれば検出数も結果も変わります。
- 検出日の終値で建てる前提です。実際には引け成行の約定価格とずれ、コストも引かれていません。
投資への活用
- 「よく知られたパターンがこの銘柄で実際に効いているか」を確認し、効いていないなら使わない判断に使います。
- 有意に見えたパターンを、エッジ節のウォークフォワードでサンプル外検証にかけます。
- 既に売買を決めている場合の執行タイミングの補助材料にします。
- パターンの出現頻度から、その銘柄の値動きの癖(転換形が多いかトレンド形が多いか)を把握します。
限界と注意点
- t検定は補正前です。9パターン×2期間の多重検定を考慮していません。
- 5日リターンは重複窓のため独立性の前提を満たさず、標準誤差が過小になります。
- パターンの定義には裁量が入ります。閾値の設定で検出数が大きく変わります。
- パターンの有効性は市場レジームに依存し、期間を変えると符号が反転することがあります。
- 取引コスト、スリッページ、約定可能性を考慮していません。短期ほど影響が大きくなります。
実際の株価データで確認する
トヨタ自動車を例に、該当パネルを開きます。移動後に銘柄・期間・入力系列を変更できます。
ローソク足パターン認識を実データで見る本ページは分析手法の理解を目的とした情報提供です。将来の価格や利益を保証するものではなく、 特定銘柄の売買を推奨するものではありません。