リスク分析

シャープレシオ・ソルティノ・VaRとは?リスク指標の読み方

シャープレシオ、ソルティノレシオ、カルマーレシオ、ヒストリカルVaR/CVaR、プロフィットファクターの計算式と、この実装での具体的な前提・限界を解説します。

シャープレシオソルティノレシオVaRCVaRプロフィットファクター

この分析で分かること

リスク1単位あたりどれだけのリターンが得られたかを複数の尺度で並べます。シャープは変動全体、ソルティノは下落だけ、カルマーは最大ドローダウンを分母に取ります。分母に何を置くかで「何をリスクと見なすか」が変わり、同じ値動きでも順位が入れ替わります。

分析方法

  1. 終値から日次対数リターンを作ります。
  2. 平均と不偏標準偏差を求め、√252倍して年率のシャープレシオを計算します。
  3. 無リスク金利を下回った日だけを取り出し、全観測数で割って下方偏差を求め、ソルティノレシオを計算します。
  4. 終値の高値からの下落率で最大ドローダウンを求め、年率リターンを割ってカルマーレシオとします。
  5. リターンを昇順に並べ、下位5%・1%の分位点をVaR、それ以下の平均をCVaRとします。

数式と変数

シャープレシオ

SR=rˉrfsr252SR=\frac{\bar r-r_f}{s_r}\sqrt{252}

r_fは日次換算した無リスク金利です。本実装の既定値は0で、パネルからは0のまま呼ばれています。つまり画面上のSRは金利控除前の値です。

ソルティノレシオ(下方偏差)

DD=1mrt<rf(rtrf)2,Sortino=rˉrfDD252DD=\sqrt{\frac{1}{m}\sum_{r_t<r_f}(r_t-r_f)^2},\qquad Sortino=\frac{\bar r-r_f}{DD}\sqrt{252}

分母mは下落日数ではなく全観測数です。下落日だけで割る流儀もありますが、本実装は全体で割る標準的な定義を採っています。

カルマーレシオ

Calmar=RannMDD,Rann=(1+Rtotal)252/n1Calmar=\frac{R_{ann}}{|MDD|},\qquad R_{ann}=(1+R_{total})^{252/n}-1

年率リターンは単純トータルリターンの複利換算、MDDは終値ベースの下落率です。分子は単純リターン、シャープの分子は対数リターンで、尺度が揃っていません。

ヒストリカルVaRとCVaR

VaRα=r(mα),CVaRα=1mαkmαr(k)VaR_{\alpha}=r_{(\lfloor m\alpha\rfloor)},\qquad CVaR_{\alpha}=\frac{1}{\lfloor m\alpha\rfloor}\sum_{k\le \lfloor m\alpha\rfloor}r_{(k)}

r_(k)は昇順に並べたk番目のリターンです。分布を仮定せず実データの順序統計量をそのまま使うため、補間はしていません。

プロフィットファクター

PF=rt>0rtrt<0rtPF=\frac{\sum_{r_t>0}r_t}{\left|\sum_{r_t<0}r_t\right|}

本実装は取引単位ではなく日次リターン単位で集計します。買い持ちのままなら、上昇した期間ではPFは自動的に1をわずかに超えます。

用語の定義

シャープレシオ
変動全体を分母に取ったリスク調整後リターンです。上昇の変動もリスクとして扱います。
下方偏差
基準を下回った分だけを使った標準偏差です。上昇の激しさを罰しません。
カルマーレシオ
年率リターンを最大ドローダウンで割った値です。最悪の落ち込みを基準にした効率です。
VaR
指定した確率で下回らない損失の境界です。超えた場合の大きさは表しません。
CVaR
VaRを超えた損失の平均です。Expected Shortfallとも呼ばれ、裾の深さを反映します。

直感的な例

プロフィットファクターが1.15と表示されたとします。取引成績の指標として見ると「利益が損失を15%上回る」と読みたくなりますが、この実装は売買を伴わない日次リターンを集計しています。株価が期間全体で上昇していれば、何も売買しなくてもPFは1を超えます。ここでのPFは戦略の質ではなく、上昇日の合計と下落日の合計の比という記述統計にすぎません。

結果の読み方

  • 画面上のシャープレシオは無リスク金利0での値です。金利がある局面では実質的に過大評価になります。
  • シャープとカルマーは分子の尺度(対数と単純)が揃っていません。銘柄間の順位比較には使えますが、水準の厳密な比較には注意が必要です。
  • VaRは順序統計量そのままなので、観測数が少ないと値が粗くなります。
  • CVaRはVaRより常に悪い値になります。両方を並べて裾の深さを見てください。
  • プロフィットファクターは日次集計です。売買戦略の評価指標としては読まないでください。

投資への活用

  • 許容できる最大ドローダウンから、投資額やレバレッジの上限を逆算します。
  • リターンが似た候補を、シャープとソルティノの差(下落の偏り方)で比較します。
  • VaRとCVaRを、1日で許容できる損失額と照らしてポジション量を決めます。
  • 期間を変えて再計算し、指標が期間に対して安定かどうかを確かめます。

限界と注意点

  • 無リスク金利が0固定です。金利水準が高い局面ではシャープ・ソルティノが過大に出ます。
  • 分子に単純リターン、分母に対数リターン由来の量が混ざっている箇所があります。
  • ヒストリカルVaRは観測期間内の最悪より悪い損失を表現できません。
  • 最大ドローダウンは終値ベースで、ザラ場の安値は反映されません。
  • すべて過去の実現値の記述であり、将来の損失を予測する統計量ではありません。

実際の株価データで確認する

トヨタ自動車を例に、該当パネルを開きます。移動後に銘柄・期間・入力系列を変更できます。

リスク指標を実データで見る

本ページは分析手法の理解を目的とした情報提供です。将来の価格や利益を保証するものではなく、 特定銘柄の売買を推奨するものではありません。