基本分析
ギャップ分析とは?夜間リターンと日中リターンへの分解
日次リターンを夜間(前日終値→当日始値)と日中(始値→終値)に分解し、寄与率・相関・ギャップフィル率・反転率から執行タイミングの優劣を検証する方法を解説します。
ギャップ夜間リターンオーバーナイト日中リターンギャップフィル
この分析で分かること
1日のリターンは、取引所が閉まっている間に動いた分(夜間)と、開いている間に動いた分(日中)の和です。対数リターンならこの分解は厳密に成立します。どちらがリターンの源泉かが分かれば、寄り付きで建てるか引けで建てるかという執行の判断に直結します。
分析方法
- 夜間リターン r_night = ln(始値 / 前日終値) を計算します。
- 日中リターン r_day = ln(終値 / 始値) を計算します。
- 両者の和が日次対数リターンと厳密に一致することを利用し、寄与率と相関を求めます。
- 夜間リターンの絶対値を33/66パーセンタイルで小・中・大に3分割し、バケットごとに日中の平均・勝率・フィル率・反転率を集計します。
- 曜日別、前日の日中リターンとの連鎖、象限別の累積リターン、60日ローリングの寄与率と相関を追加で集計します。
数式と変数
リターンの厳密分解
対数の加法性により、夜間と日中の和は日次リターンと誤差なく一致します。単純リターンではこの分解は近似にしかなりません。
夜間寄与率
全体のリターンのうち夜間が占める割合です。分母が0に近い期間では値が発散するため、水準の解釈には注意が必要です。
夜間↔日中の相関
負の相関はギャップ反転(寄り付きの過剰反応が日中に修正される)、正の相関はモメンタム継続を示します。
ギャップフィル率と反転率
フィル率はギャップアップ日に前日終値まで戻った割合(ギャップダウンは逆)、反転率は夜間と日中の符号が逆だった割合です。
用語の定義
- 夜間リターン
- 前日終値から当日始値までの変化です。PTS、海外市場、開示情報の影響を反映します。
- 日中リターン
- 当日始値から終値までの変化です。ザラ場の需給を反映します。
- ギャップフィル
- 窓を開けて始まった価格が、前日終値の水準まで戻ることです。
- 反転率
- 夜間と日中でリターンの符号が逆になった割合です。高いほどギャップフェードが機能します。
- 象限
- 夜間と日中の符号の組み合わせによる4分類(続伸・反転・続落・反転)です。
直感的な例
夜間寄与率が140%と表示されたとします。100%を超えるのは、日中リターンの合計が負だからです(夜間+日中=全体なので、夜間が全体を上回れば日中は負)。この場合「上昇はすべて寄り付き前に起きており、ザラ場ではむしろ削られていた」と読めます。ただし寄与率は分母が全体リターンなので、全体がゼロ近傍の期間では極端な値になります。水準よりも、ローリング寄与率の推移を見てください。
結果の読み方
- 夜間寄与率が60%を超えるなら夜間が支配的で、オーバーナイト保有戦略の検証価値があります。
- 寄与率は分母が期間全体のリターンです。全体がゼロ近傍だと発散するため、単独の数値を鵜呑みにしないでください。
- 夜間↔日中の相関が負なら寄り付きの過剰反応、正ならモメンタム継続です。
- 曜日別で夜間と日中の符号が逆で大きさが近くなるのは自然です。日次リターンの平均が年率数%÷252とほぼ0だからです。
- ギャップ戦略は毎日の往復を伴います。反転率が高くてもコスト控除後で残るかは別問題です。
投資への活用
- 寄り付き執行と引け執行のどちらが有利かを、この銘柄の実績から判断します。
- 反転率が高い銘柄では、大きな窓をフェードする戦略の検証候補にします。
- オーバーナイトのみ保有する戦略の妥当性を、夜間寄与率から事前に評価します。
- ローリング寄与率と相関の変化から、レジーム転換の兆候を捉えます。
限界と注意点
- 始値は寄り付き板の結果であり、実際にその価格で約定できるとは限りません。
- 夜間リターンには配当落ちや権利落ちが混入します。分解では区別していません。
- ギャップ戦略は取引回数が多く、コストとスリッページの影響が支配的になります。この分析はコスト控除前です。
- バケット分割の閾値(33/66パーセンタイル)は期間内の分布に依存し、期間を変えると境界が動きます。
- 多数の集計(バケット・曜日・象限・連鎖)を同時に見ているため、偶然の有意が混ざります。多重検定の補正はありません。
実際の株価データで確認する
トヨタ自動車を例に、該当パネルを開きます。移動後に銘柄・期間・入力系列を変更できます。
ギャップ・日中/夜間分解を実データで見る本ページは分析手法の理解を目的とした情報提供です。将来の価格や利益を保証するものではなく、 特定銘柄の売買を推奨するものではありません。