基本分析

マルチタイムフレーム分析とは?日足・週足・月足で性質はどう変わるか

日足・週足・月足に集約したときの分散・歪度・尖度の変化を中心極限定理の予測と比較し、依存構造とフラクタル性を検出する方法を解説します。

マルチタイムフレーム中心極限定理フラクタル時間集約Hurst指数

この分析で分かること

同じ価格データを日足・週足・月足に集約し、統計的性質が時間スケールでどう変わるかを見ます。もしリターンが独立同分布なら、集約後の分散・歪度・尖度は中心極限定理が予測する通りに変化するはずです。予測からのずれが、そのまま依存構造の証拠になります。

分析方法

  1. 日足リターンを週(約5日)・月(約21日)単位で合計し、各スケールのリターン系列を作ります。
  2. 各スケールで分散・歪度・超過尖度・ACF(1)・Hurst指数を計算します。
  3. 独立同分布を仮定した中心極限定理の予測値を計算します。
  4. 実測値と予測値を並べ、ずれの方向と大きさを確認します。
  5. Hurst指数がスケール間で安定しているかを見て、単一フラクタルかマルチフラクタルかを判断します。

数式と変数

時間集約

rk(n)=iblockkri,n5(),  21()r^{(n)}_k=\sum_{i\in \text{block}_k} r_i,\qquad n\approx 5\,(\text{週}),\;21\,(\text{月})

対数リターンの加法性により、期間の合計がそのまま集約後のリターンになります。nは集約する営業日数です。

独立同分布での予測(中心極限定理)

σn2=nσ12,Sn=S1n,Kn=K1n\sigma_n^2=n\sigma_1^2,\qquad S_n=\frac{S_1}{\sqrt n},\qquad K_n=\frac{K_1}{n}

Sは歪度、Kは超過尖度です。独立なら集約とともに分布は正規に近づき、歪度と尖度は決まった速さで0へ向かいます。

ずれの解釈

Knobs>K1n    正の依存(ボラティリティ・クラスタリング等)K_n^{obs}>\frac{K_1}{n}\;\Longrightarrow\;\text{正の依存(ボラティリティ・クラスタリング等)}

尖度が予測より遅く低下する場合、独立性の仮定が破れています。週足・月足でもファットテールが残ります。

Hurst指数のスケール安定性

HdailyHweeklyHmonthly    単一フラクタルH_{daily}\approx H_{weekly}\approx H_{monthly}\;\Longrightarrow\;\text{単一フラクタル}

Hがスケールで変われば、単一の指数では記述できないマルチフラクタル構造を示唆します。

用語の定義

中心極限定理
独立同分布な確率変数の和は、個数が増えると正規分布に近づくという定理です。
時間集約
短い足のリターンを合計して長い足のリターンを作る操作です。
マルチフラクタル性
Hurst指数が時間スケールによって異なる性質です。単一の指数では記述できません。
超過尖度
正規分布を0とした裾の厚さです。集約とともに0へ近づくのが独立の場合の予測です。
リサンプリング
日足を週足・月足へ変換する処理です。OHLCVそれぞれに適した集約方法を使います。

直感的な例

カメラのズームに例えます。日足は接写で細かいノイズまで見え、月足は引きで大局が見えます。ズームを変えても同じ模様が見えるならフラクタルです。実務上の含意は明確で、日足の超過尖度が5、月足で予測(5/21≒0.24)より大きく2.0残っているなら、日次VaRを√21倍して月次VaRを推定する計算は過小評価になります。集約しても裾が薄くならないからです。

結果の読み方

  • 尖度がCLT予測より遅く低下するなら、ボラティリティ・クラスタリングなどの正の依存があります。
  • 予測通りに低下するなら、その銘柄のリターンは概ね独立に近いと考えられます。
  • Hurstがスケールで安定なら真のフラクタル、変化するならマルチフラクタルです。
  • 日足のACF(1)がほぼ0でも週足で正なら、日足では見えない低周波のモメンタムが存在します。
  • 月足は標本数が日足の約1/21になります。統計量の信頼区間が大きく広がることを前提に読んでください。

投資への活用

  • Hurstが最も0.5から離れるスケールを、予測可能性が高い保有期間の目安にします。
  • 採用する戦略の時間軸に合ったスケールの統計でリスク管理を行います。
  • √nスケーリングでVaRを換算してよいかを、この分析の結果から判断します。
  • 短期と長期で性質が異なるなら、時間軸ごとに別の戦略を用意します。

限界と注意点

  • 月足へ集約すると標本数が約1/21になり、統計量の信頼性が大きく低下します。最低3年以上のデータが望ましいです。
  • 週・月の区切り方(暦か営業日固定か)で結果が変わります。
  • Hurst指数の推定は手法と窓の選び方に敏感で、フラクタル節の推定と一致しない場合があります。
  • CLTの予測は独立同分布を前提にしています。ずれの原因が依存構造か非定常性かは、この分析だけでは区別できません。
  • 構造変化を含む期間では、集約後の統計量が異なる局面の混合になります。

実際の株価データで確認する

トヨタ自動車を例に、該当パネルを開きます。移動後に銘柄・期間・入力系列を変更できます。

マルチタイムフレーム分析を実データで見る

本ページは分析手法の理解を目的とした情報提供です。将来の価格や利益を保証するものではなく、 特定銘柄の売買を推奨するものではありません。